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“CEDEC 2019” 講演者インタビュー特集
第1回 人の心を惹きつける、リアリティを追求したキャラクター表現への挑戦

2019年9月に行われた「CEDEC2019」にて、Luminous Productionsのクリエイターたちが
最新のゲーム技術に関して様々な講演を行いました。
それぞれの講演者のインタビュー記事を今回の第1回より不定期にて公開いたします。
講演内で伝えきれなかった、より詳細な内容や、開発者の想いを主にお伝えしていきます。

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(左)岸 明彦(中央)黒坂 一隆(右)蓮尾 雄介
リードテクニカルアーティスト リード3Dキャラクターアーティスト プログラマー

"BackStage"制作においてのハイエンドキャラクターグラフィックスについて講演を行った3名

―まずは今回の講演にあたってのそれぞれのセクションについてご説明をお願いします。

黒坂氏:今回のプロジェクトではディレクターを担当しました。
その中でもキャラクターアセットパートのリードも務めさせていただきました。
キャラクター見た目、肌、眼、髪の毛、衣服のディテールの部分のアセットを担当いたしました。

  

岸氏:僕はモデルが出来たときに、そのモデルを動かせるようにジョイントを入れたり、どのくらいモデルが そのジョイントへ追従してくるのか、設定(スキニング)をリガ―としてやりました。
シミュレーションの際は、プログラマーと機能の追加や仕様を一緒に決めながら画をつくっていきました。
またアセット作業に必要なDCC用パイプラインツールの整備も担当してます。 Luminous Productionsではリギングとパイプライン整備がテクニカル・アーティストの仕事になります。

※リガ―:「リギング」と言われるCGキャラクターにアニメーションを付けるための「リグ(動かす仕組み)」を設定する職種

蓮尾氏:キャラクターの表現全般のシェーダ等を担当しているんですが、主に今回は大量のアセットをどうやって 作っていくかという点で、シェイプブレンディングやフェイシャルのブレンドなど、様々な技術を駆使して、 一歩進んだ高効率なキャラクターのアセットづくりのワークフローをプログラミングしていきました。

今回、黒坂さん、岸さん、蓮尾さんの3人で取り組むことになった経緯をお聞かせください。

黒坂氏:「ハイエンドキャラクターのつくりかた」のようなテーマで実施しようとしていたので、 キャラクターが包括される人選と考え、岸さんと蓮尾さんに僕から声を掛けさせていただきました。 岸さんが担当している動きやシミュレーション、蓮尾さんが担当している描画周りのシェーダー、 そういった部分の向上が見込めないと、最終的に高品質なキャラクターにならないという想いがあり 「見た目」と「動き」と「ランタイムでの実行」を大事にするといったところで今回の3人で 発表することになりました。

そもそも「ハイエンドキャラクターのつくりかた」をテーマにしようとしたきっかけはどういったものでしょうか?

黒坂氏:これまでにない高品質なキャラクターを作ろうというのはLuminous Productionsの取り組みとして ずっとあったので、今回もそのテーマで発表することになりました。 「ハイエンドキャラクターのつくりかた」の、より先の実装を見据えたデータの構成になっています。

レイトレーシングを実装した"BackStage"の3人のバックステージ(舞台裏)

"BackStage"のシーンはどういうコンセプトだったのでしょうか?

黒坂氏:まずは技術的に、レイトレーシングが映える環境、反射が多い且つ多くても違和感がないものと考えていく中で 「鏡」が浮かんで、そこから「鏡」を連想したときにああいった舞台裏の環境が頭に思い描かれた感じです。 そこからコンセプトとして、役者の舞台裏のイメージが出来上がり、舞台裏で メイクしているときや衣装替えのシーンを混ぜ込んだりして、次の舞台に臨める準備を しているところを「舞台裏」(バックステージ)として作り込みました。

レイトレーシングとなると、やはり反射・透過・屈折といったところがテーマになりますね。

黒坂氏:そうなんです。化粧をする場面となると化粧道具とか半透明や反射がすっごい多いので… ガラス瓶や香水瓶とか、マニュキュアもですけど、そういった物がバーーッてたくさんあったりして すごく難しいシーンを作り上げちゃったなあ…と思いました(笑)

確かに置いてあるもので、半透明のものから屈折しているものを見せる部分はすごく再現度高いシーンでした。

蓮尾氏:ラスタライゼーションでレンダーした画とレイトレーシングの画を並べて、半透明の部分を比較すると、圧倒的に再現度が高いです。

黒坂氏:あれは化粧用の筆立てがあるんですけど、それが透明のボックスに入っていて、その手前にマニュキュアの小瓶とかが並んでいて…あそこが一番きついシーン…(笑)今でもそこに手を伸ばすとフレームが落ちます。

蓮尾氏:あそこが一番重たいシーンですね。

黒坂氏:でもここが一番レイトレーシングの効果が分かる。なおかつ重いと。

岸氏:透明なオブジェクトが2つ重なっていたら、全部計算させてるんですか?

黒坂氏:そうですね。

岸氏:プリレンダーでも大変ですもんね…。 屈折は何回計算させるか事前に決めといてからレンダリングしないとダメで。 回数重ねた方がキレイなんですけど、ちゃんとやろうとすると…すごい時間がかかります。

そういったテクニカル的な観点で、講演後より掘り下げたかった点等ございますか?

黒坂氏:実はワークフロー的にありまして。プリレンダリングの高品質な結果を、いかに効率的にリアルタイムに 変換するかという点で取り組んでたんですが、その点の掘り下げが間に合わなくてですね。 本当はプリレンダーで作られたシェーダーをルミナスシェーダーというルミナス独自の リアルタイムシェーダーで置き換えた様子等を紹介したかったです。

紹介しようとしていた資料等は公開できますでしょうか?

黒坂氏:途中段階のものにはなりますが・・・。

岸氏:僕の方では手のデフォメーションの比較を入れてもっと分かりやすく公開したかったんですが、 デモへの組み込みが間に合わずCEDECでも紹介しきれなかったので、今後どこかで公開できるように準備したいと思います。

※比較資料に関しては後日公開予定です。

蓮尾氏:プログラムの観点からは、リアルタイムで衣装を切り替えるシステムの部分であります。 今回発表した内容では、衣装を丸ごと切り替えているんですが 本来は髪の毛だけ、服だけ、インナーだけ、それぞれ細かい箇所を入れ替える仕組みの下地を作っていました。 ですが、アセットやクロスの持ち方等準備が足りてない点で今回は見送ったというのがあります。

それは全部の組み合わせがあるということでしょうか?

黒坂氏:はい、それがランダムに出てくるということが本来はできるはずでした。カットシーンが流れながらも、できるというもので。

蓮尾氏:技術的にちょっと間に合わない実装でした。

黒坂氏:クロスとかシミュレーションとかでフレームが遅延したり等、そういった問題を先に解決していったりしていたので、衣装替えとかの方はどうしても最後の最後になってしまい、 だんだんプライオリティが下げられてしまいました。 ようやく最後のフリー操作のところで、一体まるまるといった感じですけど衣装替えがバッと切り替えられるようになって、それは発表できましたけど。

フリー操作のところで切り替えられるのはそれだけで驚きがありました。レイトレーシングベースなのに切り替えられるというところを驚いていたのですが、よりすごいことをやろうとしていたということですね。

黒坂氏:そうですね、もっと全然…。カットシーン中とかも自由にできるはずでした…。

カットシーン中にやるのと、フリーモードで切り替えられるのでは難易度がどう違うのでしょうか?

黒坂氏:うーん…。基本的にはそんなに変わらないかもしれませんが、例えば演技中、結構難しいポーズしているときに、衣装が変わってすごい衣装がめり込んでいるとか…。

岸氏:フリーモードって基本的に立ちポーズなのでシミュレーションに優しいポーズなんですけど、カットシーンは結構難しいポーズがあったりするので…。

黒坂氏:最初はカットシーンでも変更できる予定でシーケンスで組んでいたんですけど、 最後はフリーモードになったときに切り替えられるというものだけになりました。

岸氏:カットシーンの前に着替えてからカットシーンを再生することはできます。

シミュレーションを安定させる計算が重いから、安定したフレームレートにはならないということでしょうか?

全員:そうですね。

黒坂氏:ポリッシュする時間が足らなくて全部の衣装パターンの品質を随時確認しながら、岸さんと相談しながら 見せられるものだけをチョイスして構成していった感じですね。ちょっと寂しい話ですけど…。

それだけやらなきゃいけない課題が明確に見えてきたという点では先への展望が見えてきたということですね。

黒坂氏:"BackStage"に関しては全部がそういう感じでした。フェイシャルもそうだし、キャラクター、イベント等々どう作るかもそうですし、ライティングも…。全部の課題がすっごい浮き彫りになったので。将来どうしたらいいかのプランニングが立てやすくなりました。

もう実際にプランニングを立てて動き始めているのでしょうか?

黒坂氏:はい、今回のデモに携わった皆が、いざ新規のタイトルでそれぞれの業務のプランニングをしようとしたときに、 "BackStage"の経験があるから「じゃあこうしたらいいよね」っていう設計を作りやすくなっていると思います。

今回パストレーシングで全て行ったことにより、課題が見え、業界内の1周先へと進めたように思えますね。

黒坂氏:ちょっと残念な気持ちですが、アーティストとしては「ここをもっとこうすればよかったのに」という気持ちがありつつ、前向きに考えると更なる向上・指針にはなったというところはあります。 それはレイトレースを入れたことによって見えてきたところもありますし、そうじゃないところも結構あったりしましたし。

ちなみに、一長一短だと思うのですが、全体で見てラスタライズとレイトレーシングで慣れてくるとどちらがやりやすいですか?

黒坂氏:僕は実はレイトレーシングの方が…。

岸氏:僕もレイトレーシングの方が…。

レイトレーシングの方がやりやすいですか?

蓮尾氏:えーと…。考え方としてはプログラマー、エンジン的に言うと、レイトレーシングの方がシンプルなんです。レイを飛ばして屈折するなら屈折する、反射するなら反射する、といったわりとシンプルで。考え方は僕もレイトレーシングの方が好きなんですけど、本気でレイトレーシングをやると…。 今は色んな人の力を借りてすごいクオリティ高い画が出てますけど、実際のオープンワールドの広大な範囲で本当にレイトレーシングやろうと思ったらプログラム的にはすごい課題が…。頭が痛くなりそうな課題がまだまだあるので(笑)

黒坂氏:すんごい時間がかかりますね。

川があって海があるようなところだと大変ですね。そこにグラスなどあったらもう大変ですね。

蓮尾氏:例えば学校の廊下の向こう側に海があるという…教室のガラスがあって更に廊下のガラスがあって…みたいなところだと屈折反射のオンパレードで大変ですね。

黒坂氏:でも良い部分もあって、半透明とかちゃんと描画してくれるので半透明の後ろに半透明を置いても間違った描写はされないですし。 これがラスタライズとかになると描画の順序をちゃんと決めとかないと半透明の先の半透明が消えてしまったりするんですよ。 何も考えなくてもちゃんとした結果が出るというか。そういったところは「いいな、レイトレーシング」となります。

実際に気候や天候等リアルタイムに変化していく自然地形のところでレイトレーシング行おうとすると大変ですか?

蓮尾氏:今回"BackStage"で実際僕が担当していたわけではないのですが、担当されていた方の色々な話を聞いたりする限りはフルで広大なシーンはまだ難しいんじゃないかなと…。 直近でいうと部分的に使うとか、限定したところで使うほうが現実的かなと。

では、環境によると思いますがカットシーンだけレイトレーシングになり、そのほかはラスタライズで対応といった形でしょうか?

黒坂氏:そうですね、ラスタライズの一部にレイトレーシングを入れていくやり方ですかね。

蓮尾氏:リフレクションはレイトレーシングでやるとか。

黒坂氏:リアルタイム性を求めるものにはレイトレーシングは相性悪いかなと思います。

業界の一歩先を見据えたこれからの課題

最後に、今回のプロジェクトに取り組んでみて感じたことや、これからのLuminous Productionsに必要なものはなんでしょうか?

岸氏:今回のプロジェクトをやってみて、やっぱりフェイシャルの表現が難しかったので…。 今回足りなかったことが何か色々分かったので、これからそれを解消していき実際のプロダクトにのせられるように頑張っていきたいと思います。 フォトリアルな表現をこれからもっと突き詰めていくので、デフォルメされたキャラクターじゃなくてリアルな物にこだわりがある人と一緒に仕事が出来たらなと思います。

Luminous Productionsのアーティストはフォトリアル主義が多いですか?

岸氏:そうですね。フォトリアル目指すぞ!ってときに同じゴールに向かっていける人が多いです。 現状、国内ではデフォルメ表現が得意なスタジオが多い印象ですが、その中でもLuminous Productionsはフォトリアルに特化したスタジオだと思っています。ゲームでフォトリアルにフォーカスした開発をするのは国内では今なかなか技術的にも高いものが必要なので取り組むのが難しいです。 それがLuminous Productionsでは取り組めるので、このスタジオならではの強みだと思います。

黒坂氏:僕は、化粧台の前とか表現的には良くなったと思っていますが、更に求められるのってゲームの世界においても、より高密度で高精細みたいな表現のものだと思います。 現実世界での高密度・高精細な情報っていうのをCGでも再現できるような、そんな環境になってきているような気がするので、これからはそういう取り組みが出来るようになっていきたいです。

いかに現実世界とゲーム世界をリンクさせられるかを突き詰めていきたいです。
なので、チームメイトとして、現実世界を正確にとらえられる人、現実世界にあるものを正確に見て、分析・アウトプットできる人がチームには多いんじゃないかなと。

高密度・高精細なすごくリアルなものと、ゲーム性との折り合いは今後どうなって行くと思いますか?

黒坂氏:そうですね…。最終的にはゲームってユーザビリティというか、ユーザーが楽しく遊べるというのが一番大前提なので、そこの障害になるリアリティは多分排除されていってしまうかなと思います。 ただ、ゲームの文法に則って世界を構築すると、リアリティが失われている点は多分あると思います。例えばNPCのアイドルのモーションや、モデルが外側だけリアルで、動き的には棒立ちのようなものとか…。そういうところの違和感をいかにつぶしていけるかっていうのは結構課題なのかなと。

岸氏:大変だと思いますが効率的な制作手法も合わせて確立していければ、よりゲーム性を拡げることも可能にはなると思います。

違和感あるところをどうやってグラフィックやAIなどでなくしていくか、というところですね。

黒坂氏:そうですね、それでいかに面白いゲームを提供できるかってところかなあと。 ゲームである以上はずっと不自然さと闘っていかないといけないですね。

蓮尾氏:それは永遠の課題ですね。

蓮尾氏:僕も"BackStage"を経験してみて思ったのが、画がリアルになる分余計にモーションの不自然さがすごい目立ってくるなと思いました。今後、一段上のレベルを目指すにはアニメーションのエンジニアが必要だなと思ってて。今AIが流行っていたりとか、グラフィックスの表現で新しいものがいっぱい出てきていますけど、アニメーションの次の次世代アニメーションっていうのが今止まってる気がしていて…。
例えばモデルの待機モーションって、大体待機してるモーションをアーティストが作ってループするだけですけど、いくつか用意されている中で「このタイミングではこのモーション」みたいな感じでずっと流していますが「このタイミングではこのモーション」っていう意図を見えなくなるエンジンがもし出来れば、機械的なループ感を排除出来て、一段上のアニメーションが出来るのかなと思います。

岸氏:さらにAIとかが賢くなってプレイヤーが近づくとちゃんと持ち場に戻ってとか、AIで起きる感情の変化とかがちゃんとアニメーションとして表現出来るようになるといいですね。 今AIが色々判断出来たり考えたり思考が出来たとしてもちゃんとアウトプットさせるのが難しいので…。アニメーションとして表現して、見ている側に伝わるように。

蓮尾氏:すごい手間はかかると思いますが、次世代アニメーションはそういうところにあるのかなあと思います。

"BackStage"のモデルの待機モーションが全然動いていなかったりしたら、すごく違和感がありますね。

全員:おかしいですね。

黒坂氏:そういう違和感との闘いがこれからも続いていくんだろうなあと思います。

ハイエンドだけではない、
ゲーム性との違和感をもなくすキャラクターづくりへの挑戦を
Luminous Productionsのスタジオだからこそ出来る環境で、
続けたいと思います。

講演資料(pdf)のダウンロードはこちら

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