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“CEDEC 2019” 講演者インタビュー特集
第2回 AAA規模のゲーム開発に必要な開発効率向上の自動化アイデアと今後の展望

2019年9月に行われた「CEDEC2019」にて、Luminous Productionsのクリエイターたちが
最新のゲーム技術に関して様々な講演を行いました。
講演内で伝えきれなかった、より詳細な内容や、開発者の想いを主にお伝えしていきます。

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岩崎 浩
プログラムディレクター

大規模開発のためのLuminous Engineのログ分析と自動テストの講演を行った岩崎氏

―今回、ログ分析と自動テストに関する講演をされていましたが、まずはこちらのテーマに至った経緯をお聞かせください。

岩崎氏:『ファイナルファンタジーXV』開発時の経験のひとつとして、コンテンツ、人数、共に非常に大規模だった点と、オープンワールドのタイトルだったという点で、様々な条件が複合的に絡み合ったバグが発生しました。またリリース後も毎月パッチを配信していくライブ的な運用スタイルだった為、デバックで苦労しました。
そこで、テストプレイをするQuality Assurance(以下QA)側のコストと、見つかってしまったバグを修正していく開発側のコスト、両側のコスト削減を、時間の問題だけではなくクオリティを高める為にもしなくてはならないことが、スタジオ全体の課題となり、今回の講演テーマである「ルミナス・エンジンのログ分析と自動テスト」の部分に力を入れていくことにしました。

―大規模タイトルになればなるほど、QAのコスト削減は大きな課題となっていきますね。その課題から、岩崎さんが今回のシステムを構築・検証することになった経緯は、どのような流れだったのでしょうか?

岩崎氏:開発の順番的に、テストプレイを行うQA側のコスト削減より、まずデバッグのコスト削減に 取り組むことにしました。その際に、まず自分達でゼロからシステムを構築するのではなく、世に出ているもので良いものはないかと思い、探していましたが色々探した結果、これといったものが見つからず…探しているうちに自分の頭の中でイメージが固まって来たので、もう自分達で作った方が良いのではないかと思い、そのまま自分達で実装し、様々な機能を追加していき、今に至った流れですね。

―今回講演の中で、「ラーニングリプレイ」の発表をされていましたがそもそも「自動プレイ」のやり方としてどういったものがあるのでしょうか?

岩崎氏:自動プレイ、QAというのは、とてもホットトピックで、各社色々な取り組みがあるようですが、その中で代表的な手法としましては、スクリプトベースの手法と、機械学習を使った手法というのがあります。スクリプトベースの手法は、昔から行われてきた手法で、一定の成果が出ることは分かっています。
けれども、そのメンテナンスコストは高いですし、タイトルに特化したものになりがちで、応用が利き辛いです。反面、機械学習を使った手法については、汎用性を持った手法が実現できるのではないか?と近年研究が急速に進んでいる分野です。
特に、ゲームの画像のみを入力とする手法については、非常に高い汎用性が期待でき、将来的には大きな可能性があると思っています。
ただ、今はまだ実験的なフェーズで、今すぐにその手法をプロダクションに生かすのは難しいのではないかと思っています。

その為、自動プレイに関しては実現に向け、様々な手法が発表されていますが実現性、メンテナンスコスト、汎用性などの面で、「これがスタンダードだ!」というようなものはまだないのではないか?と思います。ただ、業界内で非常に需要があるし、必ずどこかが共通化出来るようなスタンダードを作ると僕は思っています。

―その中で「ラーニングリプレイ」はどういった位置にある手法でしょうか?

岩崎氏:Luminous Engineで、色んなプロダクトに使えるようなものにする手法は何か、と考えたときに先程お話しましたスクリプトベースの手法と機械学習を使った手法の間のようなものが個人的には良いのではないかと考えました。
それが今回お話した「ラーニングリプレイ」という手法です。

岩崎氏:スクリプトベースの手法と機械学習を使った手法の丁度中間くらいの運用コストと、実現性で可能なところをピックアップしたような手法です。
まだ開発中ではありますが、実現に向けてどこか一緒に作っていけるような企業があれば一緒に開発していくのもありかなと思っています。それか、「自分が作るよ!」って熱意溢れる方がLuminous Productionsに入ってくれたらすぐにでもお任せしたいくらいの気持ちです(笑)

―なるほど。一緒に開発してくれる人、企業募集中といった状況ということですね。そういったシステムを一緒に作っていくには、どういった部分を担ってもらうのがベストなのでしょうか。

岩崎氏:例えば、データサイエンティストという職業で、ビッグデータを分析する数学的な知識にすごく特化している方々がいます。ただ、データサイエンティストとしてのスペシャリストなので各分野個別の専門性があるわけではありません

一方、我々はもちろんゲームの専門家ですが、データサイエンティストの専門家ではありません。ただ、ゲームを開発する上で何のデータをビッグデータとして収集したらいいか、どういったデータを集めることができるのか?何を学習させたいのか?というのは、データサイエンティスト側だけでは詰め切れない部分ではないかと思います。

しかし、集めたデータをどういう手法で学習させるか?といった部分はやはりデータサイエンティストのノウハウが欲しい、と思うことがあります。
結果、データサイエンティスト側からとゲーム開発側からの両側から詰めていく方が、自動プレイはうまくいくのではないかと思いますので、例えばですが、ゲーム開発とはまた別の数学的な視点で計算が必要な部分を担っていただきたいです。

―今後多方面からの技術が必要になっていきそうな為、データサイエンティスト等の異業種の方たちの活躍の場も増えていきそうですね。

岩崎氏:そうですね。学習のさせ方も結構色んな手法があるので、様々な業種の方たちのノウハウで 話し合いをしていきながら進めていけるのがベストですね。
やはり機械学習の分野は、今進歩が非常に激しく、毎月のように新しいものが出てきます。それらをきちんと把握し、ゲーム開発に応用して行くにはやはり、その専門家にいて欲しい、と言う想いがあります。

自動プレイが実用化する未来で進化する、高効率・高クオリティのゲーム開発の実現

―自動プレイやAIが進化し、ゲーム開発に実用的になった際、開発の順番自体も変動していくのでしょうか?

岩崎氏:それはもちろんその時の技術に合わせて、変動していくと思います。
QAが自動化出来て、デバックがしやすくなれば、それだけで常にリリース出来るような形になるかなと。

例えば、通常ゲーム開発で、QAを回すのは終盤の為、開発の途中段階では、多くのバグを含んだ状態になっていることが多いです。
自動でQAが回り、常時バグが取れる状態になれば、基本的にどのタイミングで切り取っても安定したバージョンは作れるようになるので、ユーザーテストも頻繁にでき、効率よくクオリティを上げられる開発のやり方に進化していくのではないかと思います。

―開発段階で新しいビルドが出来る度に、裏ではずっとQAが回っているような体制でしょうか?

岩崎氏:そうですね、端的に言うとリリースのコストが下がります。
今まで、リリースというとものすごくビッグタスクで非常に開発に負担がかかるものでしたがそこの負担を減らせば、もっと頻繁に出せる。
実際、規模は違えどCHAPTER1が出来たらユーザーに渡し、その評判を聞きながらCHAPTER2~3を作ってリリースしていくような、ライブリリースのような取り組みをしているタイトルは既に業界内にあります

それってすごく理にかなっていると思っていて、ゲームもこれだけ大規模になって開発費もかかるなら一気に全部作ってどん!とリリースするよりも、ちょっと作ってリリース、ちょっと作ってリリース…というスタイルの方がリスクヘッジも出来るしユーザーの声も聴きやすいですよね。

―現段階でそういったリリースの仕方が出来ない要因はどこにあるのでしょうか?

岩崎氏:今の状況でそれをやるとなっても、年中QAすることになってしまいます。
QAやデバックコストが下がれば、そういったライブリリースのようなものも、実現するかと思いますが現状、AAA規模の開発ではQAコスト的に厳しいです。そこのコストを下げるためのシステムを現在構築中です。

―そういったライブリリースが実現されれば、間違いなくゲームのクオリティは上がっていく予感がしています。

岩崎氏:間違いなくあがると思います。
みんなが想像するようなものが自然と出ますし、ゲームデザイナーの人がより早く完成品をプレイすることが出来れば、その分より早くポリッシュが出来ますし。

―おかしい点や「もっとここを面白くしたい!」といった点に時間をかけることが出来てクオリティアップにつながりますね。

岩崎氏:そうそう、やっぱりゲーム開発って不安定なバージョンで時間を割くコストが非常に多くて 不具合が起きたから直さなきゃとか、そういった類のものに割く時間はかなり多いので 不具合の修正はもちろん必須ですが、クリエイターである以上はより面白いものを作る為に時間をかけたいですね。

岩崎氏:―スケジュールを前倒し前倒しにすることにより、開発者が理想に近いものを、ユーザーを待たすことなくリリース時に出せる、理想のスタイルですね。

大規模開発の課題と今後の展望

―今回、大規模開発の難しい点も講演でお話されていましたが、岩崎さん自身の課題としてずっと抱えている問題なのでしょうか?

岩崎氏:そうですね、僕自身というよりも業界全体の課題かと思うのですが大規模開発の難しいところは一言で説明し辛いのですが…少人数だとすごいうまくいくことでも、人数が多くなるとうまくいかなくなることがよくあります。
それは他の人の作業を、お互い把握しづらくなる、というのが要因だったり、全体の把握がし辛くなったり、様々な要因があると思います。

人数が少なければ、誰が何をやっているか分かるし、自分の変更点がどういう影響を及ぼすのか明確ですし、スケジュールも見えやすく、何より全員が状況をよく把握しながら考えて動けるので100%の力を発揮できる。
でもやっぱり大規模になると、中々そうはいかなくて…。
みんな細分化された仕事が多くなる傾向にあり、何か大きな変更をしようとしても、その影響範囲が多大な故に困難が多かったりと、課題だらけです。

―Luminous ProductionsはAAA規模の開発を続けているので、少人数で開発は難しいと思いますが解決法としてはどういった取り組み方をお考えでしょうか?

岩崎氏:実際今も行っているのですが、タスクフォースを組み、まず小規模チームで組む、といった 小規模開発の良いところをできるだけ取り入れて開発していこうとしています。
ただ、今はチームを小規模に分割しても、開発環境はブランチ1つから、多くても数個程度でチーム単位に比べると、ずっと大規模なままなので、修正の影響範囲が大きい問題などは残ったままです。
そこを今後はチーム毎にブランチを分けて、あとで合体する、といったやり方で開発していくべきかなと。

※ブランチ(branch):開発時における管理システム

岩崎氏:ただ、現状そのやり方でいくと、それぞれのブランチが別々に進化していってしまい、あとで合体するときに苦労することになります。
そうならない為に、裏で自動的にマージをし、自動でテストする仕組みが必要です。 自動テストの仕組みがあれば、チーム毎にブランチを分けて、小規模開発のような感覚で開発しつつも、裏では常に自動で統合テストが行われていて、小規模で検証して良かったものだけを、メインブランチに統合していくやり方が実現できると思うので、大人数開発の難しいところを、一部は解決できるのではないかと考えています。

―そのシステムが出来上がれば各チームが分かれていながらも、本体ビルドをそこまで意識せずに、まずはチーム内で最善を揉み続けることができるのですね。

常により上質な開発に取り組めるよう、進化を続けるLuminous Productions

―先ほど、異業種の方とも今後協業していく必要があると伺いましたが、Luminous Productionsの中で開発をしたいという方がいらっしゃったら、どういう方と働きたいとお考えですか?

岩崎氏:自ら課題を見つけて、それを解決するためにはどうすればよいかを考えることが出来る人ですね。
我々はエンジンを作っているので、エンジンの使い方を学んでその枠の中でどうしようって工夫するより、もう一歩視野を広げて、そもそもこのエンジンのワークフローは合っているか?この部分は作り直した方が開発効率があがるんじゃないか?といった、そもそもの部分に視点を向けて取り組んでいける人が必要だと思います。

―岩崎さんにとってLuminous Productionsはどういうスタジオだと思いますか?

岩崎氏:エンジンをつくっているという時点でかなりレアなスタジオだと思います。
例えば、自動テストによって開発効率が上がる、ということが分かっていたとしても、直接プロダクトに結びついていない仕事に時間を割くのは他のスタジオではなかなか難しいと思います。

エンジンを作っているスタジオだからこそ、そういった開発効率の部分等に時間をかけて取り組める点は、このスタジオならではの利点かなと。

―エンジンを作ってないスタジオとの1番の違いはどういったところでしょうか?

岩崎氏:エンジンの汎用性を前提に資産化できていて、取り組める点だと思います。
しかもエンジンを使って作るものが完全新規のAAAタイトルなので、目標が高いがゆえに 直接ゲーム開発に紐づいていないことでも、未来のプロジェクトも見据えると、コストがかけやすいし、取り組みやすい。
他のスタジオだと直近のゲーム開発がどうしてもプライオリティが高くなるので、「そこまでやらなくていいよ」ってなってしまうことが多いと思いますがLuminous Productionsではまずそうはならないです。

―スタジオの方針として、将来性のあるアイデアはどんどんトライしていく方針なのでしょうか?

岩崎氏:そうですね。やっぱり新しいアイデアの実現化を目指しているので。
他社が作ったタイトルの二番煎じを作ろうとかは全くありません。
他が取り組んでないけど、可能性があるような技術があれば是非取り組んでいきたいし、どんどん尖らせたい、そういったマインドですね。それは僕個人だけではなく、会社全体として。

―第1回目のインタビュー特集でも、常に突き抜けて一番いいAAAタイトルを作ろうという挑戦を続けていくというお話になっていましたが、スタジオのスタッフ全員がそういうビジョンになっていますね。

岩崎氏:まだ他がやったことがないようなことだったりしても挑戦してみよう、そういうスタジオです。
突き抜けていいものを作ろうっていう、その1点だけなので。

講演資料(pdf)のダウンロードはこちら

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