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“CEDEC 2019” 講演者インタビュー特集
第5回 Luminous Productionsならではの表現を目指したリアルタイムレイトレーシングとクオリティを追求できる独自の開発環境づくり

2019年9月に行われた「CEDEC2019」にて、Luminous Productionsのクリエイターたちが
最新のゲーム技術に関して様々な講演を行いました。
講演内で伝えきれなかった、より詳細な内容や、開発者の想いを主にお伝えしていきます。

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荒牧 岳志
開発部長兼スタジオヘッド

■NVIDIA社との共同取り組みで実現したフルシーンパストレースデモ"BackStage"

―NVIDIA社とはどういった経緯で今回のデモの取り組みに至ったのでしょうか?

荒牧:元々、次世代を見据えてレイトレースの技術開発をしようと思っていました。
そこで、一緒にやってくれる会社を探していて、NVIDIAさんにメールを書いている本当に最中に、「レイトレースのデモをやりませんか?」とNVIDIAさんから声を掛けていただいて、これはすごく運命的なタイミングだなと思い、一緒にやってみようということになりました。

―タイミングも重要だったかと思いますが、以前から荒牧さんの構想として考えていたというのもあるのですね。

荒牧:そうですね。ルミナス・プロダクションズの次の目指す強みは何かと考えたときに、映像とゲームの親和性をより高めることだと思いました。
映像のデータをゲームにもってくるためには、ゲームのレイトレース対応の重要性が高く、いずれ実現しなければならないという構想がずっとありました。
ルミナス・プロダクションズには3DCG映像を作っていたメンバーも多くいて、プリレンダーからゲームのデータに起こす作業が得意なメンバーがいるというのもありました。

―NVIDIA社からお声掛けあったというのもあり、非常にレイトレースは重要性が高くなっているように思えますが今のゲーム業界で、レイトレースは荒牧さんの中でどういった位置とお考えでしょうか?

荒牧:まだハードウェアがごく一部しかないので、本当にこれからの技術だと思います。どのゲームエンジンも物理ベースのレンダリングというのはこれまでも行ってきていて、どんどん差がなくなっているように思えます。
その中で、ルミナス・プロダクションズならではの表現っていうのが出来るんじゃないかと思い、スタジオ全体として非常に重要な位置づけになっています。

―レイトレースの表現を一部取り入れたりしているものは見掛けますが、今回"BackStage"のようにフルシーン、パストレースのデモでやろうと思ったのはどういう動機が大きいですか?

荒牧:もちろんリフレクションだけレイトレースとか、シャドウだけレイトレースを取り入れたりというのは今他のメーカーさんもやっていますが、先程お話したようにルミナス・プロダクションズはプリレンダーでやっているメンバーが多いので、それと同じ品質をレイトレースでやることで、ゲームが目指すクオリティのリファレンスになるものをまず作ろうと思ったからです。

その為にまず、パストレースをやることで、ゲームをどういう方向に進化させたらいいのかの指標にしたいと考えています。

―なるほど。ゴールとしてどんなものが出来るのかを見て作った方が共有しやすいというところですね。

荒牧:やっぱりボトムアップ的にひとつひとつの技術を積み重ねて絵を作るより、まずはゴールは「これだ!」っていうのをレイトレースで作りたいと考えていました。
チームとしても、チームじゃなくてもスタジオ全体の指標にもなり得るものだと思えましたので。

―技術的に最先端だから取り組んでみたというよりも、ゲームのワークフローの中に組み込める確信がある上での取り組みということでしょうか。

荒牧:もちろん、その前提があっての取り組みでもあります。リファレンスがあり、それに合わせたプリレンダーのパスの処理や、ライティング手法を取り入れ、いかにプリレンダーのCGと同じクオリティのものをリアルタイムで出すかというのを次に技術開発しようと思っています。

―次のステップに進むために、かなり成功度の高いデモだったのではないかと思いました。
ちなみに、今回のデモでやりたかったことの実現度は荒牧さんの中でどのくらいでしたでしょうか?

荒牧:そうですね、思った以上によく出来たなと思います…(笑)。

本当にパストレースのデモとしては100点満点の出来だと思っています。
実際にはフェイシャルの方でもう少し課題が見えた部分もありますし、ワークフロー的にもっと改善すべきポイントっていうのがたくさん見えました。
でも、そこが見えたというのが大きくて、次に何をしたらいいかというのが具体的な作業に落とし込めてきていて、改善に向けて大きく前進している段階です。

業界的にこれからもまだまだレイトレースのデモを作ったりとか、実際にゲームに適用とか増えていくと思いますが、その中でもかなり先行して出来た部分もあります。パフォーマンス的な問題とかも実際に見えた部分も大きく、当初考えていたより大きな成果を出すことができました。

―その高い完成度を出すために、苦労した点等はございますでしょうか?

荒牧:取り組みを開始してから約3か月という短い制作期間も大変でしたが…。
特に、"BackStage"のオブジェクトは半透明だったり、髪の毛だったりと実際のゲームに近いオブジェクトがかなり多かったのですが、そこの文献があまりなかったので苦労しました。

―過去の事例で、完全なデモ向けのものは多くありそうですが、実際にゲームに使われるマテリアルだったりをレイトレースで再現している事例はそこまでなさそうですね。

荒牧:そうですね、細かい点をどうするか等は他社の発表成果であまり見られなかった部分なので手探りでなんとか…という感じでした(笑)。

―シェーディングの手法が変わるのも、非常に根幹的な部分でトライアンドエラーがかなりかかりそうに思えますが、それでも3か月という短い期間でデモを完成させた、その秘訣などはありますでしょうか?

荒牧:自分自身が、過去のプリレンダーのシェーディングを実装していた時期もあり、今のレイトレースのシェーダーを書くのは比較的分かりやすいです。元々のDirectX RaytracingのAPI思想がそういうプリレンダーの設計をかなり持ってきていたので、そこを理解している状態であればそんなに難しくない技術だなと思います。

―ただ、そこを理解するというのは過去皆が通ってきたような道ではありませんよね?

荒牧:ゲーム業界の人が使ってきたシェーダー技術と、プリレンダーのシェーダーは全然違う別物だったので、両方やっている方ってあんまりいないんじゃないかなと思います。

―では新しい人材的にも、ゲーム業界からだけではなく、映像系の方々にも積極的に入り込んでいただきたい部分でしょうか?

荒牧:はい、今映像とゲームとでどんどん差がなくなってきていますし、現在のルミナス・プロダクションズでもアニメーション班は映像系から転職してきている方が多く在籍しています。
ゲーム開発のキャリアがなくとも、映像のキャリアをゲーム開発では大きく活かせますし、知見も非常に広まります。特にプリレンダーを取り入れた今のゲーム開発では非常に戦力になる部分です。
そういった部分こそ、"BackStage"を見て大きく実感してほしいなと思います。

■テクニカル面の進化に伴い、求められる他業種からのスキル

―映像業界からの知見も今はとても重要になってきているということですね。今はゲーム業界だけじゃなくて、様々な業界の技術を取り入れていかないと次世代のゲーム開発に追いつけないし追い越せない、と全5回のインタビューを通して感じました。

荒牧:モデリングの方もCADを使ってきたキャリアの方も重要視されています。
映像やアニメ系の台本書いている方も活躍していますし、プリレンダーの技術を持っている方は非常にゲームに相性がいいです。
そういった色んな業種の方々の能力が活かされるし、求められる環境になってきていると思います。

―ハードウェアの進化に伴い、やらなくてはならないことも、出来るようになっていくことも膨大になってきているので、本当に色んな人達に活躍の場がありますね。

荒牧:多方面の技術を取り入れる一方で、根幹として我々がしっかりやらなくてはならない点は、ゲームの世界をしっかり作り上げる、芸術性というか…プレイヤーがいかにゲーム世界に入り込めるかをしっかり表現していく必要があると思っています。
プレイしていて違和感になる部分は排除していかないといけないし、本当に自分自身がゲームに入り込んでいる感じ、臨場感をもっと突き詰めていけるようにしたいです。

―ゲームに入り込むというのは、やはりフォトリアルな方向でしょうか?

荒牧:そうですね、ワールドワイドでの展開を見据えると、よりリアルに近いプレイヤーの追体験の表現の方がスッと入り込みやすいと考えています。何より世界中のユーザーを考えて、そういうフォトリアルな表現でゲームをお届けしたいと思っています。

リアリティというか、すごい映像を見せたいというわけではないので、いかにプレイヤーがその世界観の中に入り込みやすいかを、一番に目指しています。

■ルミナス・エンジンによって実現する、アーティストが目指す妥協のないクオリティを追求できる開発環境

―今現在ルミナス・プロダクションズでは様々な技術検証を行っている段階かと思いますが今後もCEDECなど、開発者向けの講演やイベント等は積極的に行っていく方針なのでしょうか?

荒牧:ゲーム開発のフェーズによりますが、積極的に行っていきたいと思っています。
検証を進めたものを、そういった場でアウトプットするのは、メンバーにとっても非常にモチベーションがあがりますし、他社さんのレスポンスも聞けるいい機会だと思っています。

―ルミナス・プロダクションズのように他社でもエンジンやツール等自社で開発している企業はいくつかありますが開発者視点で見たときに他にない、ルミナス・エンジンの強みは、荒牧さんから見てどういったところでしょうか?

荒牧:エンジンの設計思想は初めから開発メンバーの効率化を目指したものなので、今までエンジンを使ったことのない方々のラーニングコストがそんなに高くなく、効率よく作業できる点だと思います。

グラフィックスの部分もかなりDCCツールからデータを持ってきやすい設計になっていますし、レベルエディタのノードベースのスクリプトも、ゲームのプロトタイプを早い段階で実装することができます。

要は簡単にゲームのサンプルを作れる環境が揃っているのでそう意味だと本当に他社のゲームエンジンに負けないものになってきていると思います。

―簡単にエンジンを使える、ゲームのサンプルが作れるという点がハイクオリティにつながっていくのですね。そういった点も、ルミナス・プロダクションズならではの環境なのでしょうか?

荒牧:ゲームのクオリティを高めるためにどうしたらいいかと考えたときにクオリティを出せる人に、いかに多くの仕事をやってもらうかという点に注力しています。

例えばキャラ挙動を作るのに、アーティストがモーションデータを作って、その後にプログラマーなどが組み込み作業をして…といったような作業だと、その過程の中でどこか妥協が出てしまったりとか、アーティストの思っていない挙動になったりしてしまいます。

そうならない為にも、ルミナス・プロダクションズはデータを作った人が最後のアウトプットまで見れる環境というのを目指しています。
今現在も、アーティストがゲームパッドで操作するところまで一人で作れる環境というのが今このスタジオにはあります。
その人がクオリティを出せるために色んなことが出来る、というのがルミナス・プロダクションズならではの特徴的な環境ですね。

―"BackStage"の取り組みでも、その環境が活かされたように見えます。

荒牧:これ("BackStage"デモ)をやるぞって決めてから、完成するまでがすごく早かったです。
やりたいことに対して即席でチームを作り、フットワーク良くできたのは、やっぱりこのスタジオならではの環境だなと思います。

■全員でゴールを決めて、実現に向けて走ることができる雰囲気のスタジオ

荒牧:それはゲーム開発でも同じで、バトルのチームもプランナーからトップダウンで落としているというよりはアーティストやプログラマーと同じチームを作って、アイデアを出しながら一緒にものを短時間で作っていくというタスクフォース型のチーム作りがすごく整っていると思います。

チーム内で同じゴール設定は早い段階で共有し、同じメンバーでやります。作業がバラバラで、これなんのためにやるんだっけっていうのはあまりないですね。

―今までのインタビューでも、面白いものに繋がりそうなものは、積極的に自由にやらせてくれる点がルミナス・プロダクションズの良いところ、というお話を何回か伺っています。
そういった環境を作るために、荒牧さんが心掛けているものは、どういったどころでしょうか?

荒牧:ゲーム開発において、ゴールとコンセプトをすごく大事にしています。
そこに向けて、チーム全体でしっかり共有しながら進めますが、その後の進め方、道筋っていうのは メンバーに任せるようにしています。
その決めたゴールに対してどう実現するか、どう自分なりの個性を出していくか、という点はやっぱりメンバーの裁量がかなり大きいやり方だと思います。
チームでのゴールと各個人のゴールのすり合わせは出来ていて、話し合いながら、任せるところは任せみんなで理解しあいながら進める。

ルミナス・プロダクションズは、新しいゲームを作っています。エンジンの技術のベースはしっかりやるメンバーに恵まれていて、BackStageみたいなレイトレースのデモを作ることもできました。エンジンもまだまだ進化していて計画もあります。ゲーム作りもこれらのベースとメンバーがいるので、新しいアイデアを素早くいれることができています。最終的には、世界中の人にびっくりし、満足してもらうようなゲームを作っていきたいですね。

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