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“CEDEC 2020” 講演者インタビュー特集
第1回 オープンワールドを、自然に意思を持って埋める。「World Editor」が目指した挑戦

2020年9月にオンラインで開催された「CEDEC2020」(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2020)のセッションに、Luminous Productions のメンバーが登壇いたしました。それぞれの講演者のインタビュー記事を今回の第1回より不定期にて公開いたします。講演内容をより詳細に、クリエイターの想いとともにご紹介していきます。

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■「オープンワールドを、自然に意思を持って埋める。 LUMINOUS ENGINEのプロシージャルへの取り組み」 の講演を行った3人

まずは、今回「World Editor」についての講演を行いましたが、そもそも「World Editor」とはどのようなツールかご紹介お願いします。

岩崎氏 :オープンワールドの広いワールドマップを作るのってすごく大変だと思いますが、そこをいかに効率的に編集するか?いかにセンスよく自動で配置するか?というところに焦点を置いたツールです。単純に自動で置くというところにアーティスト的な手が入り、アーティストならではのこだわりが組み込める形なので、アーティストやゲームデザイナーのセンスを阻害することなく、スマートに自動化できるものを作ってみた、という感じです。

Luminous Productions公式YouTubeチャンネル

なるほど、アーティストとプログラマーががっちりと協力し合って出来たツールなのですね。職種の垣根を超えたようなプロジェクトのように聞こえますが、それぞれ具体的にどのような役割分担で開発を進めたのでしょうか?

岩崎氏 :僕は、自動生成するコア部分のフレームワークというか、下回りというか。要するに、ランタイム側の、プロシージャル側のフレームワークの設計と実装です。

濱野氏 :僕はプログラマーとして、実際にエディターをどう使っていくかというワークフローのツール担当でした。

山本氏 :自分はエンバイロメントアーティストなので、岩崎さんと濵野さんが作ったエディターを使わせていただく側でした。エディターでどんな手段をとれば良いプロシー ジャル背景が作れるか検証し、ネットワークを組んでいきましたが、表現のために足りない機能があれば、お二人にオーダーすることもありましたね。

濱野氏 :そうでしたね、僕はアーティストさんと一緒に仕事をしたのが初めてだったので、チャレンジングなことを出来ている感じがしてワクワクしました。切り開いている感がして楽しかったです。

職種関係なく、お互いにアイデアやオーダーを出し合って開発を進めていく環境だったのでしょうか?

岩崎氏 :そうですね。山本さんの方から、「こういう情報をとりたい」「こういうノード作ってくれない?」などの要望があって、それに対して提案をしたり、常に山本さんとのキャッチボールで進んでいきました。山本さんのオーダーに対して、こっち的には何に使うのかよく分からないけど、用意したらすごい使い方していたとかも多々ありましたね。

山本氏 :役職関係なく、ワールドエディタチームみたいになりましたね。バグや他アーティストから貰っている問題点とかも共有して。役職的に何が適しているかという割り振りはあったものの、自分の作業以外はそしらぬ顔というわけでなく。僕もただネットワーク組むだけでなく、処理負荷的にやばいですか?と聞いたり。お互い最適案を探っていく感じがありました。

濱野氏 :業種の壁がなく、スムーズにやりとりが出来たからこそ、柔軟にアップデートしていけましたね。

山本氏 :アーティストからのバグ報告とかあると、自分も責められている気分になったりしました(笑)

岩崎氏 :岩崎:山本さんが、テクニカル寄りのアーティストだったので、かなり踏み込んできてくれてガッチリ組んで進めていけたのでよかったですね。

■ミクロ(手作業)からマクロ(自動)まで。シンプルに効率化を目指す「World Editor」

今までのオープンワールドなゲーム開発でもこういったツールを使用していたと思いますが、今回、当時と一番違う点はどういったところでしょうか?

岩崎氏 :圧倒的に自動生成です。今までは「手で高速で塗れます」という仕様でした。「ここに木を塗るんだ」というところに塗れば木が塗れた。ただ、そこが木なのか石なのかは、誰かが意思を持って、塗らなければいけなかったんですね。今回は「このへんは青っぽい森林」と思って塗るだけで、いい感じに岩や草、花、木がバランスを考えながら自動で置かれます。より一段上の、マクロなエディティングで良くなった点ですね。

―それこそ本当に職種関係なく誰でも塗れそうですね。

岩崎氏 :誰でもボタンを押すだけでそれっぽいものは出来上がりますね。もうアーティストの方が、この木はもう少し右かな左かなと悩むことはあまりないと思います。

山本氏 :マスターアップ直前などに、木を1本いじるとか微調整はあると思いますが、開発の序盤~中盤など、大まかに進んでいく段階では今のツールをそのまま使って作っていく形で充分かと思います。

「青っぽい森林」などの森以外でも、ゲームによく登場するような冷たい気候や温かい気候などのフィールドも塗り分けることが出来るのでしょうか?

岩崎氏 :そういう場合だと植生や属性がガラッとかわるので、エリアごとに山本さんにルール決めをしてもらい、決めたルールそれぞれをどこで塗るか、レベルアーティストが判断しますね。ミクロの差であれば、ひとつのルールの中で吸収する可能性もあります。ただ寒冷地方と砂漠だったらガラッと違うので、同じルールのパラメータ違いというよりは、ルールをまるっと変えちゃう。

山本氏:例えば砂漠ネットワークや雪山ネットワークなどそれぞれのルールを作って、それぞれネットワークを塗りあうことで、グラデーションをつけたりもできますね。いくらでも考え方次第で応用は出来ると思います。

ルールさえ固めてしまえばなんでも作れるということですね。それであれば効率よく量産が出来そうに思えます。

岩崎氏 :そうですね。今までは、素晴らしい森を1つ作った時、もう1つ同じようなクオリティで森を作るとなったら、また頑張るしかなかった。でも今回は、山本さんがいい感じの森のルールさえ作れば、どんなに広げたとしても、コンピューターの計算時間はかかるものの人の手を介さずに同じ質のものを量産できるし、リピート感もない森が出来ますね。

濱野氏 :ちなみにそのいい感じに作るルールも、もともとはブラックボックス化されていて、プログラマーしか触れないものでしたが、アーティストさんがネットワークとして編集できるようになったので、よりセンスのある見た目がより細かく指定できるようになりました。

様々なカスタマイズをして作り、それをベースに新たなルールを作って量産したり、無駄がどんどんなくなってまさにシンプル且つ効率がいいですね。

岩崎氏 :そうですね、まあ似たような機能は他にもちろん色々あるんですが、それらの既にある機能とは別に我々はリアルタイム性を求めたので、色々カスタマイズして今回「World Editor」というものが出来たという感じですね。

山本氏 :使っている側からしたらリアルタイム性はすごく大事なんです。ちょっとしたパラメータの変化を実際のモデルとライティングで、リアルタイムで見ながら調整できるのはとても絵が作りやすい。以前はブラックボックスだったから、アーティスト要望がプログラマーに渡り、プログラマーが実装して…というワンクッションがありましたが今回はアーティストが直接ネットワークを調整できるようになり、しかもそれがリアルタイムですぐ確認できるようになったので、めちゃくちゃ早いスパンでクオリティを出していけて、答えが見つけやすいです。

岩崎氏 :既存のツールを使わずなんでもかんでも自分たちでやるつもりっていうのはなんですが、ゲームとしてリアルタイム性の編集結果が見たいであるとか、ややこしい計算必要としないシンプルな処理はこっちでどんどんやっちゃおう、と思っていますね。

濱野氏 :他ツールを使おうとすると、そこの学習コストもありますよね。ツールを実際に使いたい人たちは沢山いるので、そういう人たちはよりシンプルな操作で作業を完結させてあげたい。そこらへんを自前のエンジンで実装する時にはやりやすい。よりシンプルな操作を目指しました。

シンプルな操作ができるようになったことにより、山本さん以外の違うアーティストの方がやられたり、違う世界観のデザインがあったりした時も、それなりのベースの地形が出来るようになったのでしょうか?

岩崎氏:できると思います。どんなゲームにでも使える「なんとなく自然な」というのはプリセットとして使えるようにするけど、このゲームならではの味付け、というのもいくらでもできます。

サンプルの地形はすごくリアルでしたが、トゥーンシェード系や、カートゥン系にも適用出来ますか?

山本氏:ネットワークの組み方ひとつで、充分表現可能かと思います。

岩崎氏 :あとはまあ、ボタンひとつ押せばプロシージャルまるごと出来るというのは最もプロシージャルに寄せた形ですが、もっと手編集によせることも出来ますね。手で塗ったら塗ったものが出るようにも出来ますが、ただその時に、木を受けたら下草が生える、とか、カーブを引いたら周りの地形がちょっとへこむ、とか、手編集のちょっとした味付けが欲しい時にそこも当然カバーしている。ミクロからマクロまでと言っていた部分ですね。手編集のちょっと味付けは、他ツールでも出来ますが、ちょっと大袈裟すぎるしイテレーションも落ちるし。そういうところは同じツールでまとめてカバーしちゃった方が結果効率がいいかなと。

山本氏 :あとアーティストがネットワーク組めるのは、アーティストのセンスを生かせます。プログラマーに実装してもらって、もし想定結果と違うもので返って来た時、一番言葉にし辛い「センス」を言語化して共有するフェースがありますが、ネットワークを直接組めるならやりたいものそのまま表現出来るので。ラーニングコストはありますが。アーティストが求めている良い結果をすぐに出しやすいのがやりやすいと思います。

■なぜ作るのか?ロマンがあるからだ。一歩先へ進むために、新しいものを作る

既存ツールと社内エンジンを要所で使い分けながら、痒い所に手が届くように自社エンジンに改良や拡張を常にしているのですね。

岩崎氏 :ちょっとかっこつけた言い方をあえてすると、基本的に欲しい機能があるとき、世の中にあるかどうか探します。ないものがあったら、既存の何かに我々のワークフローを合わせるのでなく、ないなら我々で作ろうというのがLuminous Productionsなんです。世の中にあるものにのっかって頑張ろうというチームではなく、ないなら自分たちで作ってでもクオリティをあげるというマインドの人が多い。世に出ている様々なツールも、新しいものを作った結果ああなったわけで。我々だって何かを一歩進めるために、新しいものを作る発想というのは大事にしています。

山本氏 :外部エンジンの場合は、欲しい機能がなかったら諦めるしかないですが、自社エンジンだったらコストはかかるけど希望すれば得られる環境ですもんね。それはアーティストとしてはありがたいです。UI使いづらいから直してほしい、とかシンプルな要望も通りますし。

岩崎氏 :それに技術者視点でいうと、技術開発をやめてしまえば、長い目で見ると置いていかれてしまうと思うので。例えば、某自動車メーカーが大きな会社になったのも、自分たちで車を作ろうとしたからであって、アメリカの車あるから乗ればいいじゃん、じゃない。世の中にあるのになんで作るの?への答えとしては、作り続けた先により大きな成果がある。我々も、既存のエンジンを使っていたらそれでしかない。これからも業界をリードしていこう、最先端を走っていこうとするならば、既存のものだけでなく、自分たちで発明していかないと厳しいのではないかと思っています。

濱野氏 :「World Editor」を土台から作りましたが、これからもここから先の拡張はいくらでも出来ます。それこそ「Luminous Engine」でしかできない選択肢が得られると思うんですよね。チャレンジングに開発したからこそ、いろんな場所に手が伸ばせるベースが出来ました。

エンジンもそうですが、Luminous Productionsのスタジオ自体常に挑戦し続け、常にアップデートし続けているんですね。

岩崎氏 :そうですね、常に勝負しています。作っていることにロマンを感じますしね(笑)全体として、自分たちで作ることを、重視しています。

山本氏 :そうですね。我々は「こうあったらいいのに」と思っている構想を実現できる。新しい方法を取りに行っているスタンスです。スタジオとしてフットワーク軽く、皆が思っているであろう理想の実現に向けて動く力も持っていると思います。

「Luminous Engine」と「Luminous Productions」は、どちらも一人一人のクリエイターたちが意志を持ってチャレンジし続け、アップデートをし続けている。新しいものを作るために、世界の一歩先へ進むために。

講演資料(pdf)のダウンロードはこちら

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